Books

A Book: 都市と都市

books-cityハードボイルド小説かと思うような前半だけで、映画化はいつかと調べたくなる「都市と都市」は、ハヤカワからSFとして翻訳が出版されている。よく考えたら絶対にありそうもない状況に、恐らくは一切の疑問を持つこともなく、一気に読了してしまう類の稀有なSFである。そもそも、SFと書きながら、本当にSFと書くべきかどうか迷う。異なる2つの都市が、重なり合って存在しているという設定自体がSFであると言ってしまえばその通りだ。しかし、その特異な設定は、見事にリアリティを感じさせるまでに書き込まれており、読みながら疑問を感じるようなものではない。設定が、ヨーロッパのイスタンブールからもそう遠くない一都市としている(と思われる)ところが、さらにリアリティを増す要因となっているだろう。昔から言われるSFのScience Fiction とは異なる意味 Speculative Fiction とするのが分かりやすい。

この手の小説にこれ以上の説明を加える事は、明確なルール違反である。ルール違反は避けなければならない。ここまでが限界だろう。だが、これだけは書いておかなければならない。この特異な設定は、時に、ごく身近な構造でもあるという事だ。
重なりあう都市のイメージは、多重化され多層化された都会の生活にも似た、ある種のもどかしさを感じさせるものである。時に、隣に誰が生活しているかを知らず、それどころか、人が住んでいるかどうかすら知らない。街ですれ違う多くの人は、すれ違っても覚えていないし、すれ違ったことすら記憶に残らない。それでも、その一人ひとりには生活も固有の世界観もある。つまり、同じような周囲を感知しない状態は、すべての人が共通に持つものであり、複雑にたたみ込まれた複層的な状態である。それは、単純に都市空間の孤独感や無関心という言葉で括れるものでもなく、多層に重なりあう構造そのもののネガティブな側面でもあるだろう。

ミルフィーユのような甘い複層化された都市空間は、SFやハードボイルドには似合わないというところもあるのだろうが、それにしても、重なりあう都市は、それ自体が重いのである。

最近読んだ本

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)
チャイナ・ミエヴィル 著, 日暮 雅通 訳

Advertisements

1 thought on “A Book: 都市と都市”

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s