Bonne journée, Cross Cultural

Paris

201510-211(written only in Japanese)

時々フランス人が理解できなくなる。散々待たされて悪態をついているかと思えば、自分では時間にルーズで「仕方ないだろ」と諦めた様に言う。待たされるのが嫌なら自分もきびきびと動けばいいだろうと思うのだが、それはそれ、これはこれと動じない。ある人に言わせれば、時計とにらめっこして時間に追われるくらいなら、お喋りでもしてのんびりする方が良いと思っているが、それでも待たされるような時は、とりあえず悪態をついてみるのが慣わしみたいなものらしい。そこには何の矛盾もないのだと言う。世界でもトップクラスの生産性の高い国だそうだから、それでも問題ないのだろう。でも、もう少し工夫の余地があると思うのは、自分が近視眼的なのか、それとも、時間に追われる癖がついているのか。
そんな状況だから、TGVに乗る時はいつもイライラさせられる。定刻通りに出発しないのにはすっかり慣れた。15分遅れなんて表示を見ると「概ね定刻通りだな」とむしろ安心したりする。慣れないのは、出発ホームの表示が10分前にしか出ないシステムだ。やっと7番線などと表示が出たと思ったら、乗客の誰もがホームに動き出す。エスカレーターや階段があったりすると大混雑になる。ようやくホームにたどり着いた頃には、発車3分前だったなんてことは日常茶飯事だ。そこで車両番号を見て、またひと騒動。自分の予約した車両がはるか彼方だったりすると、荷物を持って走るしかない。なにせ長距離列車である。長い長い列車に大荷物は当たり前。やっと乗れたと思った頃には定刻を過ぎていたりする。そこで気づくのだ。定刻通りになど出発しないと。(ぴったり定刻通りに目の前でドアを閉められたこともあるから安心出来ないが)
空港もしかり、以前に書いたことがあったと思うが、荷物検査の長蛇の列に飛行機を待たせたという話も特段珍しいことではない。先日もシャルルドゴール空港の出国カウンターは、ディズニーランドのアトラクション待ちのような長い列となっていた。様子を見るなりこれはいかんと思って時計を確認したが、時計を見たところで何も解決しない。ただただ待つしかないのだ。

列に並んで辺りをうかがえば、のんびりと本などを読みながら自分のペースで待つ人もいれば、少しでも先に進もうとそわそわと動き続ける人もいる。待つ姿はひとそれぞれ。様々な思いが出会うことなくゆらゆらと漂う。中国語を話す大きな集団は、少し離れた同士で冗談でも言い合っているのか突然大声で笑い、その間でフランス語で捲したてるビジネスマンが電話に悪態をつく。私の前といえば、マイクのついた大きなヘッドホンで電話をしながらアフリカ系の女性がしきりにボーディングパスを見ている。なにもそんなに大きなヘッドホンで電話しなくてもと思うが、周囲の喧噪に邪魔されずに済むのだろう。少し変な姿ではあるが、こんな時には確かに便利に違いない。電話を終えたその女性は、肩をすくめてやれやれと同意を求めるのだった。ひどい列ね。そんな感じだ。
「長く待ちそうだ」と言うと、同士が現れたということなのだろう、「間に合わないわよ」と愚痴を言い始めた。「見てよ、もう出発の時間なのよ。あと30分。絶対間に合わない。なんで2つしかカウンター開けないのよ。」絶望的である。聞けばこれからモロッコ経由でアフリカ大陸のどこかまで行くらしい。聞いたことのない地名だったが、モロッコで乗り継ぐとのことだった。黒い皮のジャケットの襟をつまみぴったりとした服を直しながら、彼女は思い立ったようにこちらを見る。
「そうだ、ちょっと荷物見ててくれない?ちょっと行って話つけてくる。」
唐突にそう言ったかと思うと、彼女は列をかき分けあれよあれよという間に先に進んでいった。機内持ち込み手荷物にしては大きすぎる黒いナイロンのキャリーバッグだけが、前に残された。そうやって人混みの向こうに時々見える巨大なヘッドホンの赤だけが、かろうじて彼女が列の先にいることを示す唯一のものとなった。見ず知らずの相手とは言え、何重にも折り曲げられた長い列の中から大きすぎるバッグを持って立ち去る輩はまずいないだろう。まして警備のしっかりとした出国の列である。何も気にする事などない。そうは言っても初めて会話をしたのはわずか数分前なのだ。落ち着かない気分で周りを見渡せば、急に周囲の喧噪がいろいろ聞こえてくるのだった。
視界から消えていた赤いヘッドホンは、程なくして遠くにちらちらと現れた。
「ありがとう。カウンターは開かないらしいのよ。私の便はディレイしてるから大丈夫の一点張り。まったくどうなってるの。」
そう言って、彼女は何事もなかったように再び巨大な赤いヘッドホンで電話を始めた。周囲は相変わらずの喧噪と我関せずと本を読み続ける誰かと電話で悪態をつくビジネスマンとのごった煮だった。
それから10分。赤いヘッドホンの女性と私はつづら折りのひとつをのろのろと進み、ようやく次の折れ曲がりまでたどり着いた。目の前には出国カウンターがあり、警備員と責任者と思われる二人が暇そうに書類を見ている。我々といえば、つづら折りをあとひと往復しなければ辿り着けない。
「ちょっと行ってくる。」
赤いヘッドホンを首に巻きつけ、彼女はロープを強引にまたぎ、責任者風の係官と何やら話し始めた。何を言っているのかわからなかったが、時折大袈裟に肩をすくめる動作とパタパタと振るボーディングパスの動きから、埒があかないという事だけは了解できた。皆待ってるのは同じなんだとでも言われているのだろう。そう思った時である。くるっと踵を返した彼女はロープの向こうから黒いバッグに手を伸ばし、さっと荷物をロープにくぐらせた。
「話はついた。」
それだけ言うと出国カウンターの最前列に向かって行く。
「良い旅を。」
そう声をかけた時にはすでにパスポートを受け取ってカウンターの間を抜けて行くところだった。こちらをちらっと見ながら小さくバイバイと手を振って。
その後、彼女が飛行機に間に合ったのかどうかはわからない。自分はといえば、再び出国カウンターとは逆方向にノロノロと進んで行くだけだった。再び喧噪が周囲を包む。結局、出国の列を完全に抜けたのは、1時間近く並んだ後だった。
やれやれ。出発時間まではあと30分。時間はないがコーヒーでも飲みながらゆっくりしたい。でも、その前にまだひとつやる事が残っていた。ここはシャルルドゴール空港の第1ターミナル。これから長い手荷物検査の列が待っている。

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