Bonne journée, Cross Cultural

サルスベリ crape myrtle

201609-341

written only in Japanese

「本日はご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」
もはや記号であって、そこにメッセージがあるわけではない。誰もがスマートフォンを覗き込み、誰かと話をし、バッグに本や新聞をしまい込み始めて、おそらくは耳に残ってはいない。実は頭に入る必要などないのだ。ベルがなるのと同じく、そこには終点ですよという合図としての「音」が雑音に紛れて聞こえるいつもの通勤電車だけがある。
だが、その次に続く英文のアナウンスは少しだけ違う。もちろん、英語であろうと本質的に「音」でしかないことには違いはない。だからこそ、音ではない意味のあるメッセージとしてアナウンスが耳に入ったその朝は、こう返してしまったのだ。
「そうだといいね。私もそう願ってます。」

英語と日本語では、実は主語となる部分が違っている。日本語での「またのご利用」をするのは乗客だが、英語では「また御奉仕することを願っています」と言っているのであって、主体は鉄道会社なのだ。決まり文句と言えばそれまでだが、立場はまるで逆である。サービスを利用して欲しいのか、サービスを提供したいのか。
どうでも良いことには違いない。メープルシロップのたっぷりかかったパンケーキが良いか、パンケーキにメープルシロップをたっぷりかけて欲しいかという程度の話である。いつもの「音」。ただそれだけだ。

このところ、スマートフォンには毎日のように電車遅延の通知が届く。すぐに復旧することもあれば、しばらく動かないこともある。その度に、面倒な思いをする人がいて、傷つく人がいて、やるせない思いをする人がいる。時には、ラッキーと探していた言い訳を見つける人もいる。ポイント通過に揺れる車内でじとっと汗をかいたつり革にしがみつきながら、「そうだといいね」と言う自分に、少し都会の疲れを感じなくもない。

写真はそろそろ終わりのサルスベリ。天候不順のためか今年は長く楽しめた。

 

Advertisements

6 thoughts on “サルスベリ crape myrtle”

  1. 確かに….。今度日本へ行ったときに、よーく聞き比べてみようと思います。日本語のときは「100パーセントお客様状態は神様」という感じがするし、英語の場合は「いくつかある鉄道会社の中から、あなたが私たちをご自分の意志で選んで利用してくれたことに感謝」というニュアンスを感じます。「自分の意志」がミソかな。笑 言葉って面白いですね。

    1. なるほど、自分の意志ですね。
      言語の持つ構造とか特性みたいなところもありますが、日本の妙に丁寧なアナウンスは、場合によっては遠慮がちな他人任せのお願いになりますね。「ご協力を賜りますようお願い申し上げます」の英文が「あらかじめご協力に感謝します」というのもありました。

  2. サルスベリは好きな花です。今年はあまりじっくり眺めませんでしたが。私もたまに、細かなアナウンスにふと疑問を持つことはあります。主語(私は)がきっちり入っていた方が、依存されているような感じがなくて、文章としては好きです。

    1. 関東は天候不順で夏花を楽しむ時間がありませんでしたね。
      やっぱりアナウンスは明確なほうがすっきりします。日本語は遠慮がちですよね。

コメントを残す (Leave a comment)

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s