Cross Cultural, Photo

SHOGUN

201705-411

(written only in Japanese)
どんな理由だったかとんと思い出せないが、先日iPhoneで「征夷大将軍」と入力しようとしたところ、なかなか正しい変換候補が出ずに苦労した。大抵はある程度単語を入力したところでありそうな変換候補を先回りして提示してくれるものだが、今回は「聖衣対象」など滅多に変換しそうにない候補が先に出て来た割には、肝心の征夷大将軍は最後の最後といった状況だった。

確かにもう何年も征夷大将軍を話題にしたこともなければ、聞いたこともない。生活していてあまり必要のない単語である。必要なくなったのは、勿体ぶって夷を征するような時代ではなくなったということではもちろんない。未だ征夷大将軍なる肩書を持った人物に出会ったことがないという話でもない。歴史の彼方にゆらゆらと見え隠れする征夷大将軍の登場が、ほとんど受験程度でしかないということだ。そもそも「将軍」自体が、今や時代劇ですらなく、どこか北米の片田舎かパリの外れにあるあやしい日本食レストランの名前かTシャツに描かれた文字という事になっている。いや、美味しいShogunだってあるに違いない。美味しいTokyoよりは案外確率が高そうではある。今や将軍とはそんなものである。

そんな風に征夷大将軍を入力しながら、少し傾いて印刷されたTシャツの黒々とした文字を思い浮かべていて、ふと気がついた。征夷大将軍が何だったかという根本的なところに疑問を感じるべきだと。つまりはよく思い出せないということなのだが、おそらく、征夷大将軍が何か明快な回答ができる人は少ないであろう。Wikiでも調べればもちろん(退屈な高校の授業中に寝ていたというのでもなければ)急に記憶が蘇るのだが、それでも本当のところは分かっていないという自信がある。まぁ、いらない自信ではある。

そうやってつまらない自信を深めながら、似たような言葉に思い当たった。神聖ローマ皇帝である。ひょっとすると征夷大将軍よりもむしろ身近だったりするかもしれない。世界経済が安定しないといったこともあってか今時は巨費を投じたプロジェクトも少なくなったような気がするが、ヨーロッパにコンプレックスでも持ってるのではないかと勘ぐりたくなるような歴史大作として、神聖ローマ皇帝を題材にハリウッドあたりで映画制作が進んでいても不思議ではない。その予告編をみてランチの話題にでもするような、どこかで歴史上のロマンがまだ残っているような単語ではある。とは言え、神聖ローマ帝国の皇帝は、ローマと聞いて思うパクス・ロマーナの時代の皇帝ではない。あえて言うなら、ローマとしての実態はもはやない時代の話である。その意味では、征夷大将軍並みに案外分かっていない名詞だろう。漢字変換を必要としないことばを使う人々には、残念ながら変換候補で時間の流れを感じることはできないのだが。

さて、例によって冒頭の写真は本文とはまったく関係ない。横浜の丘の上で青空にひるがえる二つの信号旗は、おそらくは”U”と”W”、”I wish you a pleasant voyage.”「ご安航を祈る」の意味である。ことばとは、そうしたものなのだ。

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